第10章 かきやりし その黒髪の 筋ごとに うち伏すほどは 面影ぞたつ
もしも、朝、ここから出ていく所を誰かに見られでもしたらと考えると顔から火が出る。
どうにもそれは避けたい。
手早く支度を済ませ、布団の上でこちらを気にしながらも全裸のまま黙っている天狐に一瞥をくれる。
「なんだ。もう一回か?」
「あぁ、かまわなんだ。このまま夜が明けきり、尾びれ背びれの噂になるのは私では無くシカマルのほうじゃから。」
「だから、帰る。」
「はいはい。」
まだ、空は白み始めた時分。
天狐を急かし身支度をさせ、飛んで家に帰った。
わざとらしくきちんと玄関から入って、今まで飲んで食って騒いで来た、とでも言うかのように。
「つーか。お前どんだけ飲んだんだよ。」
「うん?」
「まだ、酒くせー。」
「うぅん。何本じゃったか?」
「本で数えんのかよ。いいわ、寝る。」
「もう少し私の武勇伝に興味を持て。」
「お前なんでそんなに元気なんだよ。」
「なんで?そりゃぁ、シカマルにせいを」
「やめろ!わかった!聞いてやるから話せ!」
「嘘じゃ。寝よう。今日は昼過ぎまで寝よう。」
「はぁ。めんどくせぇ。」
(松茸の季節)