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~短歌~

第10章 かきやりし その黒髪の 筋ごとに うち伏すほどは 面影ぞたつ




心地の良い解放感と放心。
それと同時に恐ろしいほどに襲ってくる火傷の後悔。
身体を重力に従わせ褥に横たわると、天狐の尻尾が俺の下敷きになった。

「ヴゥ」

天狐の獣らしい唸り声。
本当に獣の怒る声で恐ろしいことこの上ないのだが、如何せん動けない。

「ヴウゥ」

天狐だって喋ることもままならないのだろう。
だから、喉の奥で唸って抗議する事しかできない。
ようやくと声が出るようになって、俺は天狐に追い打ちをかける。

「これで人の女だな。ヒトって言い方はいただけねぇ。俺の女だ。」
「ふぅ。尾の上からその肢体を退けろ。」
「ひでぇ言われようだよ。なぁ。好かったんだろ?」
「ヨかったかと?ふん。そっくりそのままお前に返す。」
「連れねぇな。」
「良かったよ。あぁ、好かった。私がシカマルを選んだ事は間違いじゃないと、奥底で感じた。」
「明け透け過ぎんだろうが、言い方考えろ。」
「おくそこでかんじた。」
「てめぇ。」

虐めてやりたい。
虐めてやりたいが頭が茹だってしまった。
しばらくは使い物になりそうもない。
はぁ。と一つ息をして身体を起こし、下敷きにしていた天狐の尾を優しく撫で、元の膨らみを取り戻させる。
満足そうに身体を丸めた天狐はそのまま目を閉じて寝るつもりのようだ。
そうはいかない。


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