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~短歌~

第2章 春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそみえね 香やは隠るる



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まさか、あんなところで去年の秋、木の実を奪って怒らせた熊に出会うとは思ってもなかった。
最近見つけたお気に入りの綺麗な森。
人間の手が入っているのは明らかだったが、めったに人を見る事は無く、ここで暮らす鹿たちは皆穏やかだった。
その日も綺麗な星空を見に行こうと、その森へと向かっているところだった。

「おう?お前はいつぞやの。」
「む!」
「おかげで空腹に耐えねばならない冬だった。」

逃げようと踵を返したが間に合わなかった。
熊の大きな手が迫り、必死に足を動かすも、その恐々しい爪が私の尻を引き裂いた。
もう一度その手を振りおろしてくる事は無かったが、私は必死に逃げた。
鹿たちの元へ駆けこめば、口々に心配してくれた。
ここには熊は来ないから。
この葉を使って。
人を呼ぼう。
と。
傷は深く、舐めても舐めても血は止まらない。
痛いのか熱いのか寒いのか解らなくなり始めた頃、けして近づいてはならぬと教えられていた人間が現れ、ようわからぬまま眠たくなった。
目を覚ますと、固い鉄の檻に入れられ、噛んでも押してもびくともしない。
少し身をよじるだけで燃えるように痛い足と尻は、見た事もない白い物で押さえられていた。
変な匂いまでする。
しかし、身体にはよさそうだ。
生きていたのならば、まず、この場から逃げ出さなければ。

「おい、うるせぇぞ。」

やかましいと言ったのか?この人間は。
もったりとした人間の雄の匂いがいたるところからするこの部屋は、さながらのこの雄の巣であろう。
起き上がる気配が無いので、触れれば隙間がのぞく部分を執拗に前足で押す。
突然、ばさり!と雄が動き出し、その場からこちらに視線を向けて来た。

「なにもしやしねぇよ。」

雄はそう言うと巣を出て行った。

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