第9章 君待つと 我が恋ひをれば わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く
ようやく靴を履き終え、ふらりと立ちあがった天狐に肩をかし、懐から財布を出す。
「いらんいらん!かわいい生徒に金を出してもらうほどオレ達はケチじゃないぞ!」
「ありがとうございます、ガイ先生。」
「はっはっは!じゃぁ、またな!」
何度か頭を下げ、酔っ払いを引きずって外へ出る。
その頃にはすっかり暗くなっていて、秋らしい冷ややかな風が吹いていた。
「天狐。どんだけ飲んだんだ。」
「うー、知らん。」
「吐きそうか?」
「いんや?気分がいい。」
「あっそう。」
肩にひっかけている天狐は段々と重くなり足を引きずるようになる。
きっと眠たくなり始めているのだろう。
仕方なく背におぶってやり、家路を急ぐ。
「シカマル。本当にすまなかった。」
「なにが。」
「上手く人に成る練習を見られてしまってな。そのまま捕まってしまった。」
「あの二人から逃げきれたら、火影になれるぞお前。」
「ほう。あの二人そんなにすごいのか。」
「そうは見えねぇだろうけどな。」
「ほう。」
機嫌がいいのはいいことだ。
女はやはり、機嫌が良くにこにこ笑っている方がいい。
(夜長の季節)