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~短歌~

第9章 君待つと 我が恋ひをれば わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く




段々と日も暮れ、赤提灯や家々に明かりが灯り始め、夕飯の匂いが漂い始める。
今日は諦めて家に帰ろう。
そう思い家に足を向けた時だった。
一軒の居酒屋から、やけに耳に付く笑い声が聞こえて来る。
あのガイの笑い声。
窓の付いているその店をちらりと覗けばやはりガイの姿。
それから、カカシと人間姿の天狐。
天狐は完全にガイの腕に捕まり、その耳をどこか諦めのようにただ頭に乗せていた。
そりゃ、俺でも無理だわ。
いくら口が達者とはいえ、相手はマイト・ガイだ。
おまけにカカシも居る。
簡単にあの二人の包囲網を掻い潜って逃げ出すのは、並大抵の忍では完遂するのは無理難題ってもんだ。
俺はため息を吐いて気合を吸う。
がらりと開けた居酒屋の引き戸が、さながら道場の門だった。

「お!噂をすれば何とやら!シカマル!」
「おっす。」
「シカマル、すまないねぇ。天狐ちゃん、借りてるよ。」
「誰もイイって言ってないっすよ。カカシ先生。」

座敷に上がれば、カカシが隣に座れ。と場所を開けてくれた。
居座るつもりはないが、礼儀としてそこへ足を折る。
折りながら、ガイに捕まっている天狐へ視線を向けると、酒を飲んでいるのか頬が赤く楽しそうににへらと笑う。

「シカマル。すまなんだ。いつもの空き地で待っていたんだがの、こやつらに追い回されてしまって。」
「何となく想像付く。おふくろがお前の事連れて来いってうるせぇんだ。帰るぞ。」
「なに?おふくろさんが天狐の事を探していたか!それはすまなかった!早く帰るといい!」
「うむ。馳走になった。ガイ、カカシ。」

よっこいしょ。と重々しい尻尾を引きずりながら立ち上がる天狐。
そうとうに飲んだようだ。

「あらら、ふらふらだね。飲ませ過ぎちゃったかしら。」
「ったく。二人とも良い大人なんすから加減ってもんをしてくださいよ。」
「いやぁ、天狐ちゃん。意外にぐいぐい行くからさ、ついどんどん飲ませちゃうんだよね。」

座敷の端に座って天狐が靴を履く間、マスクを付けていないカカシがにやにやと口元を釣り上げ、俺に向かうのがむずむずした。

「まぁ、いいじゃない。こうやって過保護に迎えも来るんだしさ。」
「それ、狙ってたみたいっすね。カカシ先生。」
「違うの?」
「いや、違わないっす。」


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