第9章 君待つと 我が恋ひをれば わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く
「ワン!」
「よ。シカマル。」
「よう。」
「なんだ、仕事終わりか?」
「お前は散歩か?飽きねぇな。」
「まぁな。そういや、さっき天狐も散歩してたみたいだぜ?」
「いっつもふらふらしてっからな。で、どっち行った?」
「さぁ。匂いが流れて来ただけだからな。ともかく商店街の方だった。」
「そっか。あんがとな。」
「おう。じゃな。」
なんだあいつは、藁しべ長者でもしてんのか?
行くとこ行くとこ誰かに会ってんな。
甘味処から商店街の方へ向かったとすれば、あいつの行きそうな所は一つ。
いつもの昼寝スポット。
自然とはやる気持ちを無理に抑えて平然を装い、なんて言って脅かしてやろうかと頭を働かせる。
空き地に足を踏み入れるも、いつもの木陰に天狐の姿は見当たらない。
水でも飲みに小川へ行ったのだろうかと思って覗いてみるが、そこにもいない。
「どこ行った?」
独り言が漏れるのも許してくれ。
俺の読みが外れるなんて意外だったから。
何か痕跡がないかと見回してみるが特に何といったものはない。
家か?
屋根を飛んで家に帰るが、おふくろに天狐を探してきてくれ。と頼まれる始末。
いったいどこをほっつき歩いてやがるんだ。
チョウジと焼肉屋でも行ったか?とも考えたが、チョウジは今日里外への任務だ。天狐が付いて行くとも思えない。
ふらふらと天狐が行きそうな場所場所を巡っていると、意外な人物に出会った。
「これは!シカマル君!お久しぶりです!」
「リー。久しぶりだな。この間はチョウジが世話になったな。」
「いえいえ。こちらこそ。チョウジ君が居てくれて助かりましたよ。」
「で、こんな道端で何してんだ?修業、じゃねぇよな?」
「可愛らしい落とし物を見つけまして。どなたの物かと思案してました。」
これです!と見せてくれたのは中に菓子の入った風呂敷。
と言っても子供サイズかそれ以下の大きさで、小さな子供が人形遊びでもしていたんじゃないかと思った。