第9章 君待つと 我が恋ひをれば わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く
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「へぇ。人に変化する事も出来るの。」
「まぁな。」
カカシにふがしをねだればあっさりと一本買い与えてくれた。
私を治療してくれたサクラの先生と聞いていたから、ついて歩くことに抵抗はない。
ともあれ、腹に一物あるような雰囲気が狸なようで気に入らなかったから、これを食べて早々に尾を向けようと思っていたところだった。
「よかったら見せてよ。」
「それは遠慮する。諸々思う所があるのでな。」
「そっかぁ、残念だなぁ。」
「すまなんだな。」
違うな。
何処となく雄の狐に似ている。
退けようとするとぬるりとその退路を断ってくる、時期の狐の様だ。
食えぬ奴。
「あら。カカシ先生!」
「おー、サクラ。」
「こんにちは。」
「こんにちは。いのも一緒なのね。」
現れた二人は良く知った二人。
特にいのは気に入っている。
いつもたくさんの花の匂いがして、相応の季節を纏う彼女が繊細で、長い髪に親近感を覚える。
「天狐も居たのね。どう?私たちこれから買い物に行くんだけど、一緒に行く?」
「何を買いに行く?」
「特に何ってわけじゃないけど、服でも見に行く?」
「うむ。そうじゃな。行く。」
狸とはおさらばじゃ。
次の暇つぶしは、いのとサクラについて行くことにした。
いのの腕に抱かれながら、店先をひやかし他愛ない話で盛り上がる。
人の雌は甘味が好きだ。
これは、初めて人の雌と接して知ったことだが、こうやって出掛けると必ずと言っていいほど甘味処へ足を向ける。
ついて行けばおこぼれが貰えるってもん。
そして、今回も例外なく。