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~短歌~

第7章 恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひ初めしか




自慢の耳に入ってくる音がやんややんやと煩くて、いつの間に閉じていたのだろう目を開けた。
人のまま眠ったのなど初めてだった。
起き上がればそこは、ヨシノの匂いのする布団で、なぜ自分かここにいるのか訳が解らなくなった。
ひとまず人の気配のする茶の間へ向かう。

「起きたかい、天狐。頭は痛くない?」
「ヨシノ。うん、痛くない。」
「そっか、じゃぁまず。なんか食べて顔洗って着替えなさい。」
「うん?」

言われるがままに食卓に付き、茶漬けを食う。
日は既にてっぺんに登り、家にはヨシノと私だけのようだった。
それから顔を洗って、シカクに買ってもらった浴衣に着替える。

「ヨシノ。昨夜私は?」
「父ちゃんが天狐にさんざん酒を飲ませて、あんたを潰して帰って来たんだよ?覚えてない?」
「覚えて居らぬ。つぶれる?」
「酒は飲んでも飲まれるな。お酒はね、過ぎると記憶が飛んだり具合が悪くなったりするの。次からは気を付けて飲むんだよ。」
「あいわかった。」

酒とは少々怖い物だな。
しかし、美味かった。
昨夜の事はあまり覚えていなかったが、楽しかった事だけはきちんと残っている。
あと、シカクの言葉が耳に付いて離れない。
隠し切れているとは思っていないが、シカクの言う通りだとすれば…。
いや、自分はどうあっても狐。
言うのも憚られるが、私の好いたシカマルは人間だ。
人と狐が思い合っていい物ではない。
そこは人間のシカマルの事だ、いい雌なら側にいる。
いのもテマリも。
それを邪魔しなければいい話だ。


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