第7章 恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひ初めしか
まずは探索から、俺はキバと赤丸と共にそれらしきものを探す。
天狐は親父とハナさんと。
「こんな鬱蒼とした中で見つけろってもなぁ。」
「俺は感知系じゃないからな。そこんとこはお前任せだ。」
「なにってハッキリ解ってれば探しようもあるんだけどな。」
ここに着いた時には既に夕刻で、しばらく歩きまわればすぐ日が沈んだ。
またひと所に合流して簡素な夕食となる。
「小動物以外の特に目立った痕跡はなかった。血の匂いなどは見つかってない。」
「オレたちの方もだ。崖が多いし、こんなんじゃ熊が狩りをするにしてもさすがに無理だぜ。」
「成果なしか。忍の線が大きく浮上したな。この後の捜索はそれをまず視野に入れて捜索してくれ。」
報告と指示を受けている間、天狐は獣らしく報告の内容には興味は示さず、親父が持ってきていたふがしに噛みつくばかりだった。
半月が上った頃また出発する。
この時の捜索も特に異常はなく、また日が昇ってからの捜索となった。
二日目、朝日が昇ると同時に出発する。
「あーぁ。ホント、特に変わりないぜ?」
「何かねぇのか。なにもありませんでした。で帰ったら火影様にどやされるだけだぞ。」
「おめぇはいいよ。オレと赤丸だよ。」
「クゥーン。」
知ったこっちゃあるか。
延々と森や岩場を歩きまわり、丁寧に巣穴っぽいところも見て回る。
普通の赤毛の狐や野兎、鼠に烏。
特にこれと言った怪しい痕跡もやはりない。
その時、赤丸が全身を強張らせ何かに感づいた。
「どした?」
「なんだ。」
「叫び声が聞こえたってよ。」
赤丸を先頭に音がしたと言う方へ走り出す。