第6章 行く水に 数書くよりも はかなきは 思はぬ人を 思ふなりけり
「やはりここでしたか。」
聞き知った女の声に顔を上げると、この暑さをものともしていない同じく中忍試験に携わる、砂のくのいちテマリの姿。
「すみません。ちょっと一休みさせてもらってました。」
「構いません。」
「もう平気です。行きましょう。」
ゲンマが立ち上がるのならもちろん俺は従うしかない。
まだ、ちやほやされている天狐を呼びつけテマリの後に続く。
「ここの団子は少し塩が入っているのだな。」
「たくさん汗をかくからだ。」
「私の口には合わなんだ。」
「水、飲んだか?」
「飲んだ。」
「ならいい。」
砂の里に来て早々だが。とテマリの前置きがあって、風影の我愛羅を交えての会議。
大人しくしていろ。と言われた天狐は我儘も言わず待つ。
当たり前だ、ふがしをゆっくり舐めながら俺の足元に居るんだから。
夕刻には解放され、涼しくなり始めた砂の里を歩いて回れるようになった。
「へぇ。シカマルの狐。」
「一応、な。俺んちで飼ってる。ってだけ。」
俺と案内役のテマリの前を歩くのは天狐。
気になるものを見つけては立ち止り、鼻で指し示し説明を求める。
主に食いもの中心。
テマリが甘やかし、天狐が食いたいと我儘を言うと何でも買い与えていた。
「あんまり甘やかすな。太るだろうが。」
「考えて買ってるよ。」
「ホントか?見境なくやってるような気がするぞ。病気になったらどうしてくれる。」
「ふふ。随分気にかけてるんだな。」
「別に気にかけちゃいねぇ。」
やがて歩き疲れたのか天狐が俺の腕に陣取る。
砂の里の主な通りを一通りひやかした所で、今日の宿になる我愛羅の用意してくれた客間に通る。
「すぐ、夕食になる。その際は別の者が呼びに来る。」
「わかった。ありがとう。」
「いや。じゃあ後で。」