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~短歌~

第5章 忍れど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで




「いってきます?」
「はい。行ってらっしゃい。」

狐に身を戻し、おべんとうを包む風呂敷をくわえる。
ヨシノに見送ってもらい、シカマルの勤め先を目指して、最近習った通力を使って屋根を伝う技術を使って歩く。
馴れた匂いを見つけ部屋に踏みいる。
薄明かり一つだけを付けてたくさんの紙と本に囲まれたシカマル。
こちらには全く気が付いていない。
とん、と机に登ってようやく気が付いた。

「天狐。」
「飯だ。ヨシノに持って行けと頼まれた。美味いぞ。」
「ありがとな。腹減ってたんだ。」

紙と本ばかりの広い部屋、書物が何の役に立つと言うのだろうか。
シカマルは忙々とヨシノの作ったおべんとうを広げ、いただきます。と口に運ぶ。

「肉、食うか?」
「いらぬ。さんざん食ってきた。」

それはシカマルの食いものだ。
他の食いものまで取るほど、意地汚くは無い。

「しかしまた、一人か?」
「あ?まぁな。俺が頼まれちまったからしょうがない。」
「人は多数で仕事をこなすのになぁ。」
「そいつにしかできない事もあらぁ。」
「そういうものか。」
「そういう狐はいつも単独行動だな。群れで行動しないのか?」
「しない。狐は個か家族でしか固まらない。群れても好き勝手やる性質でな。」
「ふぅん。」

がつがつと腹の空いた子供のように食い終わると、また仕事に手を付ける。
今夜は帰れないのは本当なのだろうか。
寝る際シカマルの腹で寝るのが暖かくて気持ちがいいのだが。

「明日から砂の里に行かなきゃなんねぇんだった。おふくろに伝えてくれるか。」
「すなのさとに行くと?」
「あぁ。」
「すなのさと?」
「ここは木の葉の里。砂の里は砂しかねぇ里だ。」
「砂しかない?」
「木がない。砂と岩と風の国だ。」

砂しかない。とは一体どういう事か。
草がまばらに生える砂地が、ただただ広く広がっているだけなのだろうか?
それとも、猪どもが泥浴びするような地なのだろうか?

「興味あんのか?」
「うん。」
「ふがしがねぇって文句を言わない約束ができたら、連れてってやってもいいぜ。別に御大層な任務じゃないからな。」
「うぅん。ふがしをおべんとうのように持って行くのは無しか?」
「ははっ。わかった、いくつか持って出かけよう。」
「うむ!」

砂ばかりの場所か。
想像がつかないが楽しみだ。

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