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~短歌~

第5章 忍れど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで




「じゃぁ、おふくろに伝えてくれ。」
「あいわかった。あ、シカマル。今宵は帰ってこれるのか?」
「どうだろうな。わからねぇ。」
「そうか。わかった。じゃあの。」

そうか。帰ってこれぬか。
明日が楽しみで、早足で家に戻る。
ヨシノに、明日からシカマルと共に砂の里へ行く事を伝え、今夜はもう寝る事を告げた。

「天狐ちゃんも行くの?」
「うむ。砂ばかりと聞いて興味が湧いた。」
「暑くないかしらねぇ。あ、何処かにシカマルが小さい頃に着ていた服があったわ。」
「服?」
「毛が焼けないように、なんとかしないと。」

毛が焼けると?
火を付けられた木々のように、轟々と燃えるのだろうか?

「焼けるって言っても、火が付く訳じゃないよ。熱くなるって言ったらいいのかしらね。服は明日までに用意しておくね。」
「うむ。わかった楽しみにしておる。」
「ふふふ。シカマルも天狐ちゃんには甘いわねぇ。」
「甘い?」
「天狐ちゃんもシカマルに懐いてるものね。鹿とは違うもの。」

ヨシノは私では無く自分に話しかけている。
それでも、半分は私に話しかけているような気がしたので一応返事だけは返しておいた。

「じゃぁ、明日に備えて早く寝るのよ。」
「うん。」
「おやすみなさい。天狐ちゃん。」
「おやすみなさい。」

私の寝る部屋はシカマルの部屋と決まっている。
もう、慣れた匂いだから。
毛布に丸くなり明日の事を思う。
砂ばかりの地、楽しみでならない。





(青梅の季節)
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