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~短歌~

第5章 忍れど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで




「今回は天狐のお手柄だな。」
「ふむう。あまり役に立っている気はせんかったがな。」
「うちの班は感知系の人がいないから結構大変だったのよね。」
「シカマルが居たからなんとかなってたみたいなもんだもんね。」
「人間は鼻があまり利かんからな。」

里に戻り、仕事が完了した事を伝え、私も少なからずの報酬を貰えた。
この里の頭、火影と言うらしいが、あの雌もまた興味深そうに私を撫でまわしていた。
むろん、撫でられるのは悪くは無いが、知らぬ人にあぁもされるのは嫌だ。
シカマルの手前我慢はしたがな。

「天狐、シカマルんちに住んでるんでしょ?」
「いや、住んじゃいないがよく来る。」
「へー。でも、何で今回任務に連れて来たのよ。」
「菓子を買う金が欲しかったんだと。」
「そのぐらい買ってあげなさいよ。ケチね。」
「うるせぇな。いいんだよ、コイツたくさん食うから。」

馴れ馴れしい雌だ。
時折雌の匂いを付けて帰ってきていたのは、この雌の匂いだったか。
他の雌の匂いがしないのは、この人間と仲がいいからなのだろうか。
シカクとヨシノのようにいずれ添うのだろうか。
アスマの散会の声が掛かり、私はシカマルと共にシカマルの巣を目指す。

「シカマル、あの雌はお前の雌か?」
「雌?んなわけねぇだろ。同じ班の仲間だ、そんなんじゃねぇよ。」
「ふぅん。人間は獣と違って年中発情していると聞いたが、案外とそうでもないんじゃな。」
「はぁ?お前馬鹿か?」
「馬鹿?一生で最も大切なのは、添う相手じゃろうが。他にも雄がいるのなら取られぬようにと牽制を張るのが常だろうが。」
「あのなぁ、お前は狐で俺は人間。違うんだよ。」
「面倒な生き物だなぁ。」

珍しく人間のシカマルとは馬が合うと思っていたが、やはり根本的なところで違う。
私は狐。シカマルは人間。
シカと名が付いているのに人間だとさ。


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