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~短歌~

第4章 うらうらに 照れる春日に 雲雀上がり 心悲しも 一人し思へば




「ふがし。っていう菓子だ。」
「人は恐ろしい物もよう作るが、美味い物もたくさん作るのだな。」
「甘い物好きなのか?」
「うむ、好きだ。気に入った。」

広くない庭を器用に高く跳びはねながら、ふがし。ふがし!と声に出す。
はしゃぐ狐を横目に見ながら、買え。と強請ってきたまんじゅうを半分渡す。

「ありがと。このまんじゅうも美味いが、ふがしが気に入った。」
「太るぞ。」
「太る?痩せすぎよりいいじゃろう?毛艶も良くなる。」
「あっそう。」

何となくチョウジと思考が似てなくもないと思った。
いつかチョウジ見たいになるぞ。と脅してやろうとも思ったが、こいつはチョウジを知らないんだった。
半分のまんじゅうを口に放り投げ、おふくろのために買ってきたまんじゅうを元の位置に戻しておく。
狐に視線を戻せば、既にまんじゅうは無かった。

「うむうむ。美味かった。礼に何か欲しい物はあるか?」
「そうだな。鹿の様子はどうだ?」
「お安い御用。」

そう言ってベラベラ話しだした狐。
どこそこの母鹿が乳の出が悪い、足の悪い仔鹿が先日死んだだの、雄たちの角が固くなって戦う練習が始まっただの、と人間では知り得ない情報が次から次へと飛び出して、いつぞやのキバの事を思い出してしまった。

「さすがだな。山の事は山のもんに任せるのが一番だな。」
「当たり前じゃ。」

えっへん。と胸を張る様子はまたも人間っぽい。

「では、そろそろ巣に戻るとする。毛づくろいの時間じゃからな。」
「あぁ。ありがとな。また来いよ、ふがし。奢ってやるから。」
「本当じゃな?では、また来る。」

草むらに飛び込む際、ふがし!と聞こえた気がしたが、空耳かもしれなかった。
そう言えば狐を連れて出かけたのは、現代の人間の服を見せるためではなかったか?とようやく思い出したが後の祭りだった。

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