第4章 うらうらに 照れる春日に 雲雀上がり 心悲しも 一人し思へば
夕食にするにはまだ早い、しかし、何処かに遠出するには遅すぎる時刻。
なにと会話するわけでも無し。
シカマルはまた書物に視線を落としているし、招かれた上何も言わずに去るのは惜しい。
しかたなしにその場に脚を折って丸くなり、雨の匂いがほのかにする空気を目いっぱい吸い込んで吐きだした。
「ため息ついてんじゃねぇよ。」
「お前こそ、私をここへ招いておいて、もてなしもしないのか?」
「そりゃ悪かったな。じゃぁ、菓子でも食うか?」
「かし?」
「甘い食いもんだ。待ってろ。」
どすどすと足音煩くどこかへ行ったと思ったら、不思議な白い塊を持ってきた。
はい。と目の前に出されたそれの匂いを嗅げば、食いものだと言うのはわかった。
手でつつくと柔らかい。
そんな事をしているうちにシカマルに取り上げられ、半分にちぎられた。
「食ってみろ。毒なんざ入って無いから。」
ずい、と差し出された白い中に黒い甘い匂いのする物。
慎重に少しだけ齧って見ると、これが驚くほど美味い。
「果実のようじゃな。美味い。」
「全部食っていいぞ。」
「礼を言う。」
誰に取られる事は無いだろうから、ゆっくりと噛みしめて食べた。
「これが菓子というものか。」
「それは、菓子の中のまんじゅうって名前の奴だ。お前、人の言葉を話せるのに案外知らないんだな。」
「興味はあるが、人の世に交わる事は無いからな。」
「お前、人に化けられるだろうが。」
「半端にな。」
「あぁ。そっか。」
すんすん。と鼻を働かせ、周りに人間がいない事を確認し、あの時のように人に変化する。
しかし、自慢の黒い耳と黒い尾は隠せない。
「修行不足?」
「も、あるが。元より強い通力を持っている訳ではないからな。限界、という方が正しい。」
「通力っつうのは、チャクラみたいなものか?」
「チャクラ?知らぬが、人も不思議な力を使うだろう?似たような物だと思う。」
「じゃぁそうだな。」