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~短歌~

第15章 嘆けとて 月やはものを 思はする かこちがほなる 我が涙かな




「え?心臓を?」
「うむ。まぁ、さして心配する事でもないらしいがの。」
「本当に大丈夫なのか?」
「定期的に火影様と、ほら、サクラってやつに診てもらってるし。経過は横ばいで、薬もきちんと飲んでるから、大して心配するこたねぇんだ。」
「辛くなれば休むし、身体はきちんと大事にしているよ。」
「なら、いいんだが。そうか…病だったとは。」
「死はどんないきものにも平等に訪れる。形はどうであれ、テマリもシカマルも同じじゃ。忍であるならなお死に近い。」
「まぁ、そうだけど。」

お冷の代わりに出されている番茶をすすって、達観した老人の如くの天狐。
数週間前、こいつの病気が発覚した時は、すぐにでも死んじまうんじゃないかと思ったが、案外としぶといらしい。

病気自体は薬で対症療法が出来るし、元々の力も相まって、しとやかな生活を送っていれば何の問題もないと言うことだ。
もちろん、きちんと治すためには手術が必要だが、天狐にそれを施すにはリスクが高い。
本人にその意思はないし、悪化しても手おくれにはならない。と伝説の医療忍者の火影様が言うんだから信じていいはずだ。
なにより、俺が側で見てるんだからな。

「気にしすぎは病の元じゃ。ほれほれ、来たぞ。」

焼きマシュマロ、彩の綺麗な上生菓子、いちご大福とうぐいす餅の盛り合わせ等々。
やはりテマリも女だ。
菓子を目の前にすると、会議室で見せていた厳格な表情は一切なく、にっこりと嬉しそうな笑顔だ。
天狐に至っては、外套を脱ぎ露わになっている獣耳が、嬉しそうにピンと立っている始末。
女はいつもこうして、くだらない話に延々と口を回し、体重を気にしながら正反対にこういうものを食ってんだろうな。

「シカマルは食わんのか?」

焼きマシュマロを一つ楊枝に刺してこちらに寄こしてくる天狐。
笑って差し出されるそれを、反射的に雛のように口を開け貰う。
すると、それを見ていたテマリが隠さずクスクスと笑う。


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