第15章 嘆けとて 月やはものを 思はする かこちがほなる 我が涙かな
「なんだ。お前ら恋人のようだな。」
「ばっか!変な事言うんじゃねぇっつうの!」
「一緒に暮らしてるんだろ?どちらかと言うと兄妹か?」
「うるせぇ。」
人の手前、ベタつくのは遠慮しようといつも心の中に決めていたのに、人間咄嗟の事にはいつもの癖が出る。
そう、家ではいつもこう。
天狐は菓子を食う時、自分だけ食うのは申し訳ない。と共犯を作る。
俺にだけじゃない。
おふくろにも親父にも同じ事をするから、慣れてしまっていた。
「くふふ。雛のように口を開けて可愛いもんじゃろ?」
「ふふっ。天狐にはかたなしのようだな。」
「はぁ。」
帰りてぇ。
帰りてぇよ。
やっぱり付いてくんじゃなかった。
「うん?シカマル。チョウジじゃ。お前を探しているようだが?」
「お。ちょっと行ってくるわ。金はこれで払っといてくれ。」
なんつータイミング!
さすがはチョウジだ。
ちょっと多めに天狐に金を渡し、いそいそと席を立つ。
外套を肩に引っ掛けて逃げるように店の外へ出た。
「チョウジ。」
「あ!シカマル!こんなところで何してるの?」
「ちょっとな。まぁ、さすがチョウジだ。」
「え?」
「いや、こっちの話。用事があった訳じゃねぇのか?」
「ううん。たまたま通りかかったんだ。そうだ、良かったら今日の夜焼き肉でも食べに行かない?」
「賛成。」
天狐か。
逃がしたんだな。
優しさか、笑うためか。どっちかだろ。
あの場に俺が居たのでは話しにくい事でもあったのだろうか?
飛び上がるようにして、店を出た俺を、中の二人は笑っているはずだ。
それでもいい。
あの場で針のむしろにされるより幾分もマシ。
しばらくチョウジと時間を潰し、頃合いを見て天狐と合流した。
「やぁチョウジ。」
「こんばんは天狐。」
まだ、テマリと行動していたようだった。
チョウジがはばからずに、天狐とテマリ、それから一緒に来ているだろう、カンクロウと我愛羅も一緒に焼き肉に行かないか。と誘う。
他意の無いチョウジの誘いをテマリは断らず、結局砂の国賓を迎え、他にいのやサクラ、道中捕まえたキバとシノ、ヒナタ。
いったいどこから嗅ぎつけたのか、我愛羅君が来ていると聞いて!とリーやテンテン、ネジまでやってくる始末。
いつもの焼肉屋で大宴会となったのは言わずもがな。