第15章 嘆けとて 月やはものを 思はする かこちがほなる 我が涙かな
翌日、天狐は約束通りきちんと支度をして、曇天の下、少し面倒くさそうに人の型で門下に立つ。
「だいたい、その中忍試験とやらが破綻になっただけで、わざわざ砂の国の者が木の葉の里を訪ねる理由が解らん。」
「砂影と火影の会談だ。中忍試験のことだけじゃねーんだよ。」
「わざわざこんな冬の月にやらずとも良い気がせんか?」
「そりゃ賛成。」
「で。なんでお前が迎えなんじゃ。」
「俺が砂影達と顔見知りだから。」
「ふぅん。」
幸いなことに今日は風が無く、いつもより暖かいと言っても過言ではないだろう。
おふくろに過剰なまでに心配された天狐は、もこもこと何枚も重ね着し、おまけに厚手の外套まで被っているから、人が毛皮を背負っているように見える。
マフラーを頭まで巻いているから、耳は見えない。
尻尾は言わずもがな服の中だ。
しばらくも待たないで、我愛羅、カンクロウ、テマリ、の砂の三姉弟が馴れない冬の格好で現れた。
「久しぶりだな、シカマル。」
「よぉ。」
「迎えサンキューじゃん。」
「面倒を掛ける。」
各々と挨拶を交わすと、我愛羅が天狐にも視線を向け挨拶を促した。
「初にお目に掛かる、砂影の我愛羅だ。」
「天狐だ。以前、砂に伺った時、テマリにはよう世話になった。」
「ん?」
「あぁ。ほら、夏によ。狐を連れてったろ。あれだ。」
「え?天狐?」
「うむ。まぁ、この姿で会うのは初になるな。テマリ。」
獣が人になることに動揺を隠せない砂の三姉弟を、ちょっとだけ笑って、すぐに火影の元へと案内する。
俺は会議には参加しないが、案内役を買っているため、まだ仕事は終わらない。
彼らの会議が終わると、昼食。
それから今日の宿へと案内し終了。
三人は以前もここへ滞在しているから、観光案内は必要ない。
楽でいい。