第14章 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
「は?影まね?お前いつの間に人も縛れるようになったんだよ!」
「人?馬鹿を言うな。私の力じゃぁ、兎を縛るのせいぜいと言った。」
「って、んなこたいんだよ!なにしてんだよ!」
「なにしてんだよ。はこっちの科白。」
そう言って、薄衣一枚のシカマルのたくましい胸をぬるりと撫で上げれば、シカマルの身体が震えたのがハッキリ見えた。
「外だぞ、雨降ってんだぞ、狭い!」
「なら黙って、動かなければ良いだけ。」
「その気にさせといて、動くなってなんだ。おい。コラ。」
それほど強い術ではないから、シカマルが振りほどこうと思えばほどける影。
しかし、それをしないのはやはりシカマルも遊んでいるのだろう。
それを肯定と受け取り、露わになっているシカマルの首筋に獣特有のざらつく舌を這わせる。
「天狐!くすぐったい!」
「耳元ででかい声を出すな。うるさい。人より何倍も感度がいいのだから、なにより狭いんだぞ?」
「じゃぁ、今すぐ」
「やめていいのか?」
「ちっ!」
動けないフリ。
縛っているフリ。
煽るフリして煽られる。
シカマルの味と匂いとを脳に刻み、また次に食う時にもっと楽しめるように美味いところを探す。
時折肌を霞める私の牙。
傷つけないようにと思う反面、アトを付けられれば。と思う。
「…ぅ。」
「耳。良いのか?」
「言うか馬鹿。」
「その言い草が既に露呈させているような物だがな。」
「てめぇ、覚えてろよ。」
「くふふ。なにをじゃ?言うて見ろ?」
動けないフリを続けるシカマルの唇を指でなぞる。
笑ってる。