第14章 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
雨に濡れ体温が奪われるシカマルの身体。
反して毛の中に暖かな空気を溜められる私の体は、段々とポカポカしてきて眠気を誘うくらいだ。
仕方なく人の型を取り、シカマルの膝に収まる。
「やみそうか?」
「うーん。しばらくはここに居るようじゃな。風が弱くなった。」
「まじか。めんどくせぇな。」
「あーぁ。ヨシノの飯が。」
「お前は年中食うことばっかだな。あ、体は平気か?」
「あん?あぁ、平気じゃ。サクラに貰った薬で呼吸は楽だし、無理な事をしなければ苦しくない。」
「ふぅん。」
夜より暗い洞の中。
たくさんの木の葉は湿り気を増し、入口を固めるにはもってこい。
もう、拳一つ分ぐらいしか空が覗けない。
何となく閉じ込められた気分になる。
スン。と鼻孔に付いたのは、人の雄の匂い。
恨みがましく振り返っても、暗がりで目の効かないシカマルはあらぬところを見ているだけ。
気が付かないふりをしようと思ったが、こんなところで暖かくなり始めた身体を寄せ合っていれば、変に気持ちが高ぶる事も無きにしも非ず。
言う私も、例外無い。
「こんなところで何じゃが。たまには狐の流儀になぞらえて見るのは、気に召さないか?」
「は?」
シカマルの膝の上でクルリと身を返し、私にしか見えないシカマルの口へ噛みついた。
ビクリと唐突なことに固まったシカマルの身体が、妙に悪戯心をくすぐる。
たまには雌が主導を握るのも悪くはないだろう。
自分の体に負荷が掛からないよう、シカマルの身体を影で縛り自分の思うように動かす。