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~短歌~

第14章 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな




「おい、天狐。いつまでそこに居るつもりだ。中に入れって。」

ほらな?

「はいはい。」
「はい。は一回だろ。」
「へいへい。」
「てめぇ。」
「めんどくさいやつじゃのう。まったく。」
「お前の事心配して言ってんだよ。」
「はーい。」
「めんどくせぇ奴だな。」
「お互いさま。」

それからシカマルに我儘を聞いてもらい、腕に抱かれながら山の見周りに出向いた。
別に歩いても良かったのだが、腕に収めてくれると言うのだからこれほど良い気分なものはない。

空は段々と厚雲に覆われ始め、冬の匂いが一層濃くなる。
やれやれ、まだ昼を過ぎたばかりで、それでなくても日が暮れるのが早いと言うのに。
これからの時期は、昼寝の時間が短くなって惜しいな。

「で。次はどっちだ?」
「あぁ、ちょっと険しいが左の藪じゃ。ほら、そこに細いが道があるじゃろ。」
「うわ。これかよ。」
「付いて行くと言ったのはシカマルだぞ?ほれほれ、進まんかい。」

虎の威を借る狐とは、人間は上手い事を言う。
いや、ちょっと違うな。
別にシカマルに虎の威はないし、感じたこともないわ。
細い獣の道を枯れたススキや足の長い草をかき分け進むシカマル。

「もうすぐ拓けるよ。」
「そういや、ここまで鹿を見てないが。この時期は何処に居る?」
「この先の木々の生い茂る場所じゃ。この時期にはやはり、食い溜めなきゃならんからな。多少の危険は冒しても。」
「危険?」
「熊がおるからな。」
「そういや、お前春に怪我しただろ?熊か?」
「あぁ。そうじゃ。」

ふむ。そうだな。去年のこの時期だっただろう。
昨年は実りが悪く、私も知らぬこの山まで足を延ばしていた時じゃったな。


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