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~短歌~

第13章 浅芽生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき




翌日、約束した昼の時間に今日は狐の姿で現れた。

「あぁ。ちょっと待ってくれ。一休みしたい。」
「どうした。朝一番で山でも駆けて来たのか?」
「いや。なに。解らんが疲れる。」

たぶん風邪の所為だろう。
頭や耳に触れてみれば熱はなさそうで、水を飲ませ暗号部の一画を借りて少し休ませた。
ちょっと苦しそうな寝息が心配だったが、天狐が起きるまで仕事に集中することにした。

「シカマルさん。あの子が天狐ちゃんですか?」
「そ。風邪気味でな。」
「ほー。そうなんですか。心配ですね。」
「たいしたことないだろ。よく食うし寝るし。」

こじらせて肺炎になりかけてでもいるんだろうか?
時折聞こえてくる咳、心配だがあまり心配し過ぎるのもどうかと思った。
30分ほどして天狐が起き出し、腕に抱いて病院へ向かった。
サクラの所へ顔を出すと、そのまま綱手様の所へ連れて行かれた。

「シカマル、天狐。よく来たな。」
「よくって…綱手様が呼んだんじゃないっすか。」
「あぁ。まぁな。」

いつもの火影室では無く診察室であったが、少しピリッとした空気に何となく嫌な予感がした。
横のデスクにはたくさんの医学書、人間の物から動物の物まである。
いくつか付箋が貼ってあり、色々調べてくれたのだろうか。
触るぞ。と綱手様が狐のままの天狐を診始める。
サクラもなんだか浮かない顔をしているし、綱手様もあまり見ない真剣な顔。
これは、もしかするか?

「うん。やはりな。」
「…どうなんすか?」
「今、天狐に咳を出させているのは『肺水腫』というものだ。しかし、それを引き起こしたのは『僧帽弁閉鎖不全症』というものだろう。」

もちろん、俺がその二つの病名を繰り返したのは目に見えるだろう。


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