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~短歌~

第13章 浅芽生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき



また、仕事に戻るのも面倒で、つまみ用の菓子をいくつか買ってそのまま家に帰った。

「おかえり。天狐、どうだった?」
「結果は少し待て、と言われた。」
「そう。じゃぁお薬もないのね?」
「うん。」

夕食の支度をしていたおふくろ。
俺が帰って来た事よりも、天狐を優先する所を見ると、家族が一人増えたような気がして妙な安心感が湧きあがる。
妹のようで、ペットのようで、恋人のよう。
ただそこにあるのは、俺のものだと言う占有欲だけだ。

この日、天狐は一切の仕事を取り上げられ、暇そうに縁側で毛づくろいに時間を割いていた。
風呂を上がり、いつものように天狐の髪をタオルで乾かす。

「ゲホッゲホ…ヴゥン。これじゃぁ、しばらくはシカクと特訓もままならんな。」
「治ったらまたやりゃいんだよ。」
「そうだな。」
「って、お前。影まねの術を練習してるって聞いたぞ?出来んのか?」
「あぁ。まだ、ほんの少しだが、のろまな兎程度なら捕まえられる。」
「へぇ。やるじゃねぇか。」
「シカマルに比べれば、抜け毛ほどのものじゃ。」

素直に褒めてやれば、自慢げに耳が揺れる。
口では謙遜したような事を言っているが、耳や尾にはハッキリ自慢が見える。
頭隠して尻隠さずか?
頭も尻も隠せちゃいないがな。
ダダ漏れ。

「時に、シカマル?」
「ん?」
「今日の仕事はよかったのか?」
「別に大丈夫だろ。めんどくせぇけど、明日行ってなんとかするさ。」
「サクラが、明日また訪ねて来いと言ってたじゃろ?」
「あぁ。」
「シカマルは明日、その仕事をするのか?」

探るような声色に、ちょっと伏せた耳。
天狐が俺の顔を見てない事をいいことに、俺は隠すことなくニヤついた。
素直に言えば可愛いのに。


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