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~短歌~

第12章 黒髪の 乱れも知らず うちふせば まづかきやりし 人ぞ恋しき




稲穂が重たげに頭を垂れ、実りという実りがたわわになる。
獣は肥え、後に来る厳しく辛い冬に備えその身衣を換える。
枯れ葉さえ脱ぎ捨て、木々は眠りに付く準備を始める。
凩の足音もすぐ隣だ。

天狐と言えば、馬肥ゆる秋。とはよく言ったもので。
すっかり旬の秋刀魚にはまり、食の興味は完全にふがしから秋刀魚へと移り変わった。

おふくろに七輪の使い方を習い、暇さえあれば火を起こし、そこで何かしらを焼いて食ってる。
秋刀魚はもちろん。肉、野菜、リンゴ、マシュマロ。とにかく色々。
おふくろと親父に、一人で使うな。ときつく言われているため、いつも俺が縁側で、見張りをしていろ。と天狐に監視を命じられる。
まぁ、ぼーっとするにゃいい。
天狐のおこぼれにあずかることもできるし。
ほとんどが焦げて苦い物だが。

そのかいあってというのが正しいのか、望んでいない結果だったのかは解らないが、傍目に見ても天狐が大きくなったような気がする。
毛吹と艶が増し、身体は丸くなり、それは人の型にも影響している。
それと同時に、換毛期がはじまり、食っては毛づくろい食っては毛づくろいの繰り返しだ。
おふくろは面白がって、天狐の抜けた毛をゴミ袋に溜めこみ、どれだけ溜まるのか楽しんでいる。

そして今日はやっとの休み。
何にもしたくなくて、縁側で寝転んでいた時だ。


「山へ行くぞ。ほら、籠を持って付き合え。」
「はぁ?栗拾いでも行く気かよ。」
「おぉ!そうじゃ!さすがはシカマル。ほれほれ、はようせんか。」



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