第11章 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
なぜ、私がその事に気がつかなかったのか。
良い訳をするようで苦しいが、こいつらの所為だ。
私を物か何かのように脇に雑に抱え、ぎゅんぎゅん!と走るから行けないのだ。
風に混じる匂いも正確に嗅ぎ分けられると言うのに、遠慮なく鼻や口に空気がぶつかれば、あふあふ。と息をするので精一杯だ。
「よし!この道に違いない!いくぞ、リー!」
「まてまて!まず、ここを通ったか確認ぐらいさせろ!」
「おお、それもそうだな。」
まったく。
この二人がシカマルやシカクと同じ忍というのに驚く。
匂いを嗅げば、ここには一切彼らの匂いはなかった。ということはまだここを通っていない可能性もある。
途中まで馬鹿みたいに獣道を突っ走ってきているから。
「二人。しばしこの場で休もう。」
「ん。なぜだ。」
「ここに匂いが無い。待とう。」
正直休みたい。
抱かれているだけだが、こいつらが走ると風に逆らって息をせねばならないから疲れる。
脇の茂みに陣を作り、夜故物騒な物が出ないかと警戒しつつ、シカマルたちが通らないか、と気を張る。
いや、気を張っているのは私だ。
あの二人はもう少し奥で遊んでいる。
殴ったり蹴ったりしてな。
「ん?」
見られている気がする。
音も匂いもしないのに、何かの視線が刺さっている気がする。
「おい!猿!」
「どうかしましたか?天狐。」
「近くにはいないはずなのに何かがこちらを見ている。」
「敵か?」
「わかりませんね。何の気配もしませんよ。」
獣にしては手が込み過ぎている、ただの人にしては技術が過ぎる。
忍だと思うのが妥当だろう。
よわよわしいが月明かりがある。
まさかこんなところで、教示してもらった影の術を使うことになるとは。