第11章 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
「こいつをシカマルに届けてくれや。」
「むむ!この子はもしかして、天狐という忍狐ですか?」
「そうそう。うちの影の術がそれなりに使える。だが、期待はするな修業中だ。」
「おぉ。まさに虎の威を借る狐。」
「いつどこで私が奈良家の威を借りた。借りた覚えも鼻にかけた覚えもないわ。」
シカクに両脇を掴まれ、ぶらん。とだらしなく身体を伸ばしながらだ。
これのどこが虎の威を借りている狐に見えるか聞きたいところだ。
面倒くさそうな猿ではあったが、頼りにはなりそうだったので、シカクの言葉に甘え、二人に付いてシカマルたちの所へ向かうこととなった。
キノコの様な頭に、緑の装束。大きい方がマイト・ガイ、小さい方がロック・リーと言う。
早速!と里を飛び出し、シカマルたちが向かった波の国という方向へ走り出す。
私はこれでも足は自慢できる。
もちろんそれは獣であるからと、忍の師であるシカクにお墨付きをもらったからだ。
しかし、あの猿らはそれを上回るぐらいに早かった。
「すまなんだな。肩を貸してもらって。」
「なんの。君の様な狐を一匹肩に乗せたぐらいで、何の修行にもならん!」
「そ、そうか。」
深く考えるのはよそう。
私はガイの肩で襟巻になる。
乗せてくれているのだから文句はない。
汗臭そうな猿だが、意外にも爽やかなお日様の匂いがして安心した。
ぐんぐんと足を進めていく猿二人。
半日もせず見たこともない大きな橋にたどり着いた。