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~短歌~

第11章 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ




今日は夕刻になればシカマルが帰ってくる。
ヨシノには山へ行ってそのまま迎えに行ってくると言ってある為、足を人里の門という所へ運ぶ。
背に大きなかごを背負った者や、牛の引く大きな車を操る者。
シカマルと同じ忍。旅の格好をした集団。
次か次か。と人が通る度草影から顔を上げるが一向に気配がない。
沈んでいく太陽が夕食の時間を告げる。

「天狐。お迎えごくろうさん。」
「うん?シカクか。」
「シカマルの奴、遅くなりそうだな。待ってんなら家で待ってたらいい。」
「ふむ。それもそうじゃな。」
「帰って飯にしよう。一人より二人、二人より三人だ。」
「人の食事は多い方が楽しいからな。」
「そうそう。」

何の断りもなく、私の体は浮き上がる。
そのままシカクの腕に収まり、ゆったりと家に向かって歩き出す。

「もうすっかり秋だなぁ。」
「ヨシノが、秋と言えば秋刀魚だと言っていた。」
「おぉ。そうだな。秋のサンマは上手いぞぉ。」
「楽しみにしているよ。」

その夜、シカマルが帰ってくる事はなかった。
じっと犬のように待ち人番をする気はなく、すこし心配しながらも今日も一人、シカマルの部屋で丸くなった。

何事もなく朝を迎え、人の型でいつものようにヨシノを手伝い、食材の買い出しやついでの菓子も買い、昼過ぎにいつものように栗と柿の見周り。
夕刻近くなってまた門の前で待ってみるが、やはり気配はなく仕方なく尻を上げて家路についた。

「ただいま。」
「おかえり!あら、シカマルまだなの?」
「うむ。とんと気配がない。」
「長引いてるのね。」
「よくあることなのか?」
「あるさね。」

いつもの事なのか。と心配な心を無理やりに納得させ、今宵もまた一人の部屋で丸くなる。
これが、約束の日数の倍続いた。
ヨシノもシカクもさすがに心配していた。


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