第11章 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
じゃぁ三日後には帰る。と言い残して出かけていったシカマル。
その間は家と山を行き来する日々。
いのとサクラに礼をするための、栗と柿の様子見だ。
つい先日まで青々としていた栗の実は、あっという間に茶色に熟し、あとは口が開いて地面に落ちるのを待つばかり。
柿の実ももっと色が濃くなるのを見守る。
それ以外はあまり山に近づく事を控えた。
鹿たちの縄張りと被っている所には特に近づけなかった。
雄たちは皆殺気立ち、雌はその毛艶を一層艶めかしく光らせる。
要は交尾の時期だ。
群れの獲得のために闘い、競い、強い者が勝ち取る。
多くの雌を獲得したものがこの山の鹿の王となる。
元より群れを作らない狐には王なる物はいないが、尊敬されるべき勇と知のある狐は居る。
だが、群れる事はない為その狐に頭を垂れる事はない。
私は鹿のそれを窮屈と思ってしまうが、寄り添い助け合わなければ生き抜く事が厳しい自然の中では、牙を持たぬ鹿はそうすべきが幸せなのだろう。
同じ命、しかし生き方というのはそれぞれだ。