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~短歌~

第11章 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ




ケホケホ。と自分が咳き込む音で目が覚めた。
昨日、遅くまで夜遊びしていたのに、朝、目が覚めて見ると太陽は思いのほか高くは登っていなかった。

スン。と匂いを嗅ぐと、やはり酒臭い。
体中いたるところから、尾の毛一本一本まで匂っているよう。
同じ布団の中でぐっすりと眠る、心寄せ我が身預けた男からは、自分の匂いがして不意に昨夜の記憶が蘇った。
耳を振って頭を振って、軽く尾も振って、昨夜は昨夜。とけじめをつける。
人の成りのまま伸びをしながら、風呂に入りたいと申し出るために、茶の間に居るであろうヨシノの元へ歩いた。

「ヨシノ、おはよう。」
「おはよう。昨日は随分遅く帰ってきたみたいだね。」
「うん。つい楽しくての。今朝は自分の酒臭さで目が覚めた。」
「お風呂、温めて入っておいで。」

湯をもう一度沸かし、昼間っから温かい湯にゆっくりと浸かる。
石鹸で丁寧に体中を洗い、耳や尾も毛の奥の奥まで神経質に洗う。
少しばかり、シカマルの匂いが落ちてしまう。と遠慮しようとも思ったが、またあとから付ければいい事。と言い聞かせ、まずはこの酒臭いのをなんとかしよう。と集中する。

きれいさっぱりした後は、ポカポカと日の当たる縁側でいつものように、濡れた髪や尾の手入れに勤しむ。
しばらくしてシカマルが起きてくると、同じように風呂に入ってきていた。

「湯船が最悪だ。」
「入ったのか?」
「入るか馬鹿。風呂か毛玉かわかんねぇ様な湯に入れるか。」
「ほう。入ればあっという間に私の香に全身包まれておっただろうに。」
「自分で風呂、綺麗にしておけよ。」
「わかっておる。」

ヨシノの昼飯を食うまでには尾も乾ききり、三人で昼食を取る。
シカマルはこれから残った仕事をしに行くと言っていたし、私は風呂を洗うと言う仕事がある。
今日は特に山へも用事はないし、一日ヨシノの手伝いと、思いだしたいのとサクラへの礼も相談しようと決めた。


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