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嫉恋

第4章 雪原の皇子




「大丈夫だよ、吹雪くん。屋根の雪が落ちただけだから」

吹雪の近くにいた荒谷が吹雪に優しく言う。吹雪は不安そうな面持ちで顔をあげた。

「……なんだ、屋根の雪か」

実際に何もなかったこと、そして荒谷の言葉に安堵したのか吹雪が息をつく。吹雪よりも二段ほど階段の下に居た夏未がそれを見てか、腕を組み呆れたように呟いた。

「このくらいのことでこんなに驚くなんて……。意外と小心者ね」
「……夏未さん、いくら何でもそれはあんまりですよ」

夏未の言葉に花織が肩を竦めながら言う。そして吹雪に目線を合わせるように背を屈め、そっと左手を差し出した。

「立てますか?」
「えっ……?」

花織が差し出した手に吹雪が驚いた様子で花織を見上げた。何のことは無い、花織よりも小柄な荒谷では吹雪を引っ張り起こすことは難しいと思ったからだ。花織は吹雪の安心を促すように柔らかく微笑む。

「どうぞ、掴まってください」
「あ……、ありがとう」

吹雪は花織の手を借りて立ち上がった。円堂がどうかしたのかとこちらに向かって声を掛けたが、吹雪は笑って誤魔化す。どうやらもう大丈夫そうだ。花織は再びゆっくり階段を降りようと足を踏み出す。だが、すぐに花織の足は留められた。

「ねえ君」

とんとん、と背後から肩を叩かれる。花織はその場に立ち止まり振り返った。それと同時に花織の肩を叩いた人物が、花織の隣に立つ。彼、吹雪は先刻から時折見せているふんわりとした笑顔で花織を見た。

「さっきから君に助けられてばかりだね。君の名前、よかったら教えてくれないかな」

どうやら、吹雪は花織に対して良い感情を抱いているようだ。特に親切に振る舞ったわけではない、むしろマネージャーという立場がなければきっと気を配りはしなかったろう。だが彼を邪険にする理由もなくて花織は彼の質問に答える。

「月島花織です、雷門中サッカー部のマネージャーをしています」
「花織さん、か。……ありがとう、親切にしてくれて」

笑顔を絶やさない吹雪。きっと彼は女の子にモテるのだろうな、と花織は彼の微笑を見ながらそんなどうでもよいことを感じていた。

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