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嫉恋

第20章 エピローグ




「鬼道さん!」

呆然としたまま俺が花織の声に顔を上げる。花織は風丸と腕を組みながら幸せそうにこちらに手を振っていた。

その表情に俺は確信する。お前がわざとこちらに、一人離れて立っていた俺に向かってブーケを投げたことを。……俺の、そしてお前自身の気持ちの決着をつけるために。

「次は鬼道さんの番ですね!」

柔らかく微笑みながら花織が声を張り上げている。花嫁に似つかわしくない、お前らしくも無い行為。恐らく俺を想い、俺の幸せを願うための、今のお前にできるの精一杯の気持ちの表現。

「フッ……」

思わず笑ってしまう。握り締めた花束がぐしゃりと音を立てた。……一言で片付いてしまうような簡単な気持ちではない。本当に断ち切るにはまだまだ時間が掛かるだろう。

だがはっきりとした、十年前からそうだったはずだ。花織が幸せならそれでいい。俺ではなく、風丸の妻となることで花織が世界中の誰よりも幸せであれるなら、それ以上が俺に必要だろうか。

今なら、本当に心の底からふたりを祝福できるような気がした。

「……おめでとう。……風丸、花織」

彼は幸せそうな彼女に向かって微かな声で呟く。暖かな春の風が花嫁のヴェールを靡かせる。優しい春の風のはずなのに、鬼道にとっては心の隙間を吹き抜ける冷たい風のように感じられた。

――――愛していたんだ。今まで、ずっと。

鬼道は胸の中で自分の恋心を過去にする言葉を呟いた。長い恋の終焉を告げるような、そんな風は静かに鬼道の腕に抱えられたブーケの花を揺らしている。彼の頭上には晴れ晴れとした雲一つない祝福の青空が大きく広がっていた。鬼道は微笑む、今まで愛し続けた一人の女性の幸せを心の底から祈る。

どこからともなく落ちた雨雫が、音も立てずにブーケの花を濡らした。
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