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嫉恋

第4章 雪原の皇子




「……一郎太、くん?」
「花織、大丈夫か?」

風丸が必死な様子で問いかける。彼自身もあまり今自分が何をしているのか、状況は分かっていないらしい。ただ花織に助けを求められ、それに答えることで頭がいっぱいのようだ。

「くっ……!」

一際大きな揺れを感じて風丸は花織を強く抱きしめる。彼はもう夢中だった、ただ花織に何かあったら……それだけが彼の中で募る。

本当に脅威が去ったことを悟ると、やっと彼は花織の身体をそっと解放する。そしてすぐに花織からそっぽを向いた、頬を赤いところを見ると無意識に自分が花織に何をしていたのか察したのらしい。

「花織、その……。悪い、妙な事して」
「……ううん」

花織は首を横に振った、そして自分から顔を逸らしてしまった風丸を見つめる。彼が守ってくれたのだ、自分の身を挺して。ちゃんと何が起きても花織を守れるように、花織の身体に覆いかぶさるようにしていたのだろう。花織は言いようのない胸苦しさを感じていた、彼の優しさで胸が締め付けられるようなのだ。

「守ってくれて……、ありがとう」
「花織……」

花織が瞳を少し潤ませて風丸に礼を言う。風丸は花織に視線を戻した、そっと花織の頬に手を這わせる。今までの居心地の悪さなど消し飛んでいた。別れたことも、周りに人がいることも何もかも忘れそうになった。ただ、キャラバン内に冷たい風が吹き込むまでは。

「もう出発しても大丈夫ですよ」

穏やかな声色に風丸も花織もハッと我に返る。そして慌てて座席に座りなおした。前方を見てみると先ほど遭難していた少年がサッカーボールを抱えてキャラバンの開き戸の前に立っている。たった今、外から戻ってきたような風体である。

「まさか……」

キャラバン内に憶測が広まり始める。それでも花織はそんな事よりも、隣に座る彼のことが気にかかって仕方がなかった。花織がとにかく心を落ち着けようと件の少年に目を向ける。少年は花織が譲った席の前に立つと、柔らかく花織に微笑みかけた。
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