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嫉恋

第4章 雪原の皇子




「……」
「……」

キャラバンが走り出しても花織と風丸は互いに話すわけでもない。風丸も花織を引き留めたは良いが、何を話したものか困り切っているようだ。あまりに会話がなく、どうしていいか図りかねて仕方なしに花織は前方から聞こえてくる会話に耳を傾けた。

「まだ寒い?」
「ううん、もう大丈夫」

塔子と少年の声だ。そろそろ走り出して五分ほど経つ。身体も温もる頃だろうか、とにかく彼はもう大丈夫なようだ。花織はそれにひとまず安堵する。低体温症や凍傷になって救急搬送、なんて大事にならなくてよかった。

「あんなところで何をしてたの?」

秋が少年に聞いた。確かにあそこはただ広いだけで何もない場所だった。民家も店も、どうしてあんなところで彼は凍えていたのだろう。

「あそこは僕にとって特別な場所なんだ。……北ヶ峰っていってね」
「北ヶ峰?聞いたことあるぞ、確か雪崩が多いんだよな」

運転手の古株が少年に声を掛けた。それを聞いて花織は少し疑問を感じた。ならば尚更、彼はどうしてそんな場所にいたのだろう。雪崩が多いのならば危険だろうに。特別な場所と言ったって、そんな危ないところにいったい何があるだろうか。

「ところで坊主、どこまで行くんだ?」
「…………、蹴り上げられたボールみたいにひたすら真っ直ぐに」

間髪を入れずに古株が少年に尋ねる。すると少年は随分と詩的な表現で答えを返した。蹴り上げられたボール、という言葉に反応したのか、花織の隣に座っていた円堂が前方にひょっこりと顔を出す。

「いいな、言い方!蹴り上げられたボールみたいにひたすら真っ直ぐに……か。君サッカーするの?」
「うん、好きなんだ」
「俺もサッカー大好きだよ!!」

彼もサッカー少年なのか。花織は彼らの話を小耳に挟みながら髪を耳に掛ける。そういえば、彼はさっきサッカーボールを持っていたような気がしなくもない。とにかくすぐに身体を暖めなければと思い、少年のことをよく見ていなかったからあまりよく分からなかったが。

とにかく花織は隣の人と話したくても話せる状況になく、少し暇だった。ねえ、と声を掛けたいが、その後なんと言葉を続ければいいだろう。
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