第4章 雪原の皇子
「花織!座るところがないならこっちに来なよ」
そんなとき、花織の名を呼んだのは一之瀬だ。花織は染岡の後ろに座る彼に視線を向ける。一之瀬もその隣に座る土門もこちらに向かって手を振っていた。どうやら花織を歓迎してくれるらしい。
「ありがとう、今行く、」
花織が礼を口にしながら、キャラバン後方へと歩きだそうとしたときだった。がしっと強い力で腕を捕まれ、その場に引き留められた。花織は驚いて振り返る。花織の腕をつかんだのは思い詰めたような表情をした風丸だった。
「一郎太、くん……?」
急に腕を捕まれて花織は困惑した様子で風丸を見た。風丸は花織の言葉で我に返ったようにハッとする。どうやら花織の腕をつかむという行動は、無意識のうちにやっていたようだ。
「……っ!……あ、よかったら……座らないか」
咄嗟に風丸が花織に提案する。……彼は、苛立っていたのだ。花織が鬼道だけでなく、見知らない初めてあった男にすら懐炉を渡すのだから。いや別に彼は懐炉が欲しいわけではないが、花織が優しさを振りまいているのが気に入らなかった。
花織が知らない人間に優しく接し、モヤモヤを溜め込んでいた。だからつい、花織の手を引き留めてしまったのだろう。自分にその資格がないと分かっていながらも。
「いいの……?」
「ああ。なあ、円堂」
「俺は別に構わないぜ。月島、座るか?」
二人の了承が得られるならばと花織は頷く。どうせ長くても白恋中学へ到着するまでの間だ。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ああ!……あ、風丸の隣がいいのか」
花織が微笑むと円堂が思い出したように呟き、花織の為に席を空けてくれた。花織はどう反応すべきか迷いつつ、とにかくありがとうと円堂に礼を言い円堂と風丸の間に掛ける。どうやら円堂は花織と風丸が別れたことにすら気が付いていないようである。
とにかく彼の中では花織と風丸は結構な頻度で一緒に居る、というイメージがあるようでそのため席を譲ってくれたようだ。