第4章 雪原の皇子
「……」
風丸は、二人の会話がすべて聞こえる位置に座っている。前の二人の楽しそうな会話は例外なく聞こえるのだ。だからあまり機嫌は良くない、本当は自分が花織と話がしたいのに。
もはや風丸は花織の気持ちを知らないとは言えないだろう。彼自身、自惚れているわけではないが、そこまで鈍いつもりもない。花織の態度、周りの言動から花織の真意は確信はなくともほとんど明らかであるし、何よりこの間のプレーがそれを裏付けている。
だからこそ、風丸は花織の態度にもやもやとした感情を抱くのだ。風丸は前述したとおり秋から、また他の人間からも"花織が風丸を好いている"というアプローチを受ける。そうなることで彼の想いは上塗りされていくのだ。
"花織が好いているのは鬼道であり、俺はその代わりだった"から"花織の傍にいるべきは俺ではないか"へと。
彼自身そう思うのならば、風丸がさっさと花織に想いを告げるべきだろう。だが彼はそれを選択することに躊躇いがあるのだ。
理由としては二つ。一つは以前、彼自らが花織を傷つけるような事をしてしまったからだ。彼女の煮え切らない態度が彼にそうさせていたのだが、彼はそれを未だに申し訳なく感じていた。それに加えて別れを切り出したのは自分だからという思いがあるのだ。それが彼の行動を封じている。
そしてもう一つは彼がこの頃になって抑えがたくなってきたある感情のせいだ。
――――花織を俺だけのものにしたい。
要するに、嫉妬と独占欲だ。彼は最近になってからますますそれが自分の中で強くなってきたように思うのだ。片思いしていた頃からそれなりに嫉妬と言う感情は覚えていた。