第4章 雪原の皇子
「鬼道さん、これをどうぞ」
「?……なんだこれは?」
「懐炉ですよ。さっきのサービスエリアで買ったんです。絶対寒くなるだろうなって思ったので」
鬼道に懐炉を差し出しながら花織が言った。市販の何の変哲もない懐炉、鬼道は花織の手からそれを受け取る。受け取った指先にじんわりとした熱を感じる。何故だろうか、鬼道はほのかに温かいそれが何物にも勝るほど自分を温めてくれるような気がした。
「用意周到だな。なるほど……、少しは暖かくなるな」
ふっと柔和な微笑を浮かべて鬼道は、防寒具をきちんと準備しておいた花織を見る。花織がくれたそれがますます鬼道の手を温めてゆく。
「でしょう?よかったら使ってください」
鬼道の感心したような声色に花織が嬉しそうに言う。鬼道は花織の方を怪訝そうに見た。これは花織が自分の防寒の為にと準備したものだろうに。
「お前が寒いから準備していたんだろう?」
「大丈夫ですよ。……ほら、まだもうひとつポケットに入ってますし。それに背中にも貼ってるので、ひとつくらいなんて事ないです」
「……準備がいいな、お前は」
花織はもうひとつの懐炉を取り出し、くすと笑った。鬼道はそれに対して呆れたような、仕方がないなお前は……そんなふうに言いたげな表情を見せる。実に楽しそうなほのぼのとした光景だ。だが、彼らの後ろに座っている人物はあまり面白そうではなかった。