第3章 一つの決着
「理屈ではなく、ただ私は彼が好き。……彼の傍で、彼を支えたい。私が持てるすべてを彼の為に費やしたいんです。……だから私は、鬼道さんの申し出に答えることはできません」
「……そうか」
「……ごめんなさい、鬼道さん」
花織は俯いて自分の表情を悟られない様に隠す。だが鬼道にはもちろん、花織の考えが分かっていた。彼女が涙声であったことも分かっていた。こんなときまできっと鬼道の心を察し、鬼道の想いに答えられないことに胸を痛めているのだろう。
そんな花織が無性に愛おしくて、手放したくなくて……。それでも自分の恋に終止符を打たれたのだということは違いなくて、鬼道は自身も思わず泣きたいような気持になった。
「……っ」
「すまない、しばらくこうさせてくれ……」
鬼道は花織の手を引いて彼女を自分の胸に抱く。花織が絶対に抵抗しないとわかっていて、花織の身体を強く抱きしめる。自分の恋の終息に身体は震え、言いようのない胸の痛みが鬼道の中に溢れた。
「花織、聞かせてくれ……。もし俺が、あの時お前にあんな言葉を言わなければ……、俺が初めて雷門と試合をしたときにお前に気持ちを伝えていれば、何か違っただろうか……?」
今更何を聞いても悔やんでも、花織が自分の物になるわけではない。分かっていても聞かずにはいられなかった。悲しげな声で問いかける鬼道に、花織の心はますます刺激される。彼の言葉にずきずきと胸が痛んだ。率直に、自分が思うすべてを彼女は口にする。
「……はい、きっと。きっとすべて違いました。何か一つ違ったとすれば、私は鬼道さんを選んでいたと思います」
「……お前が好きなんだ、ずっとお前が好きだった。愛しているといっても過言じゃない」
「鬼道さん……」
花織の耳元でそっと囁いて、鬼道は花織の身体を解放する。そして花織の首筋を両手で包み、言い聞かせるように花織に話す。