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嫉恋

第3章 一つの決着




花織は彼が走ることを愛しているのを知っていた、だからいつも彼は楽しそうだった。

「ああ。俺が奴らからボールを奪って、皆に繋げないと。それに相手のボールを奪ってしまえば奴らはシュートを打てないだろ、お前が前に言っていたようにさ」
「一郎太くん……」

決勝戦前の合宿で花織の言っていた言葉。花織は彼を見つめた、あの時の自分の言葉を彼は聞いてくれていたのだ。彼に当てて囁いた言葉、ちゃんと答えてくれたのは見間違いではなかったのだ。

「だから、もっともっと特訓しないとな。俺のスピードで奴らをかき回せるくらいに」
「うん。……応援してる、一郎太くんが走る姿が私……」

好きだから、その言葉を紡ぐ前に花織は踏みとどまった。そんなことを言う前に彼に伝えることがある、先に話さなければならないことがあるだろう。花織は一度大きく息を吸うと、気持ちを落ち着かせて言葉を紡ぎだした。

「あの、一郎太くん……。わたし、一郎太くんに伝えたいことがあって……」
「……花織」

風丸は、何となく彼女が今から話そうとしていることがあの約束に関連したものだと悟ったようだ。花織の方へ向き直り首を縦に振る、彼らはどちらともなく歩みを止めた。そして二人きりの世界の中、花織が自分の思いの丈を告げようと口を開く。

「一郎太くん、私……」
「おーい!!風丸ー!!月島ー!!」

ビクッと2人とも突然に呼ばれた名前に飛び上がった。きょろきょろとあたりを見回してみると、ちょうど木々が途切れて光が差し込む場所があった。どうやらそこがキャラバンを止めている広場のようだ。

花織も風丸も話に夢中になりすぎて、すぐ傍まで戻ってきていたことにふたりして気付かなかったらしい。そこから円堂がこちらに向かって声を掛けている。

「そんなとこで何やってんだよー!!早くしないと全部食っちまうぞー!!」

完全に雰囲気はぶち壊しである。花織も風丸も、すでにその彼らにとって重要な話を続ける気は失せていた。

「……行くか。話は、また後でな」
「そうだね……」

ふたりは一度大きくため息をついて、チームメイト達の元へと歩き始める。こうして結局もどかしいまま、ふたりの関係はまたも修復せずに終わってしまったのだった。

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