第2章 想いのすべて
「気にするな、花織。……さっきはタイミングを外しただけだ」
「……そう?」
気にかからないわけではないが、豪炎寺がそう言うならと花織は頷いた。ほとんどそれと同時にチームの後半の作戦が決定する。どうやら、鬼道が気づいたジェミニストームの攻撃パターンの裏をかくという作戦で行くらしい。
「甘いわね」
だが、そこに厳しい表情で踏み込んできたのは監督の瞳子だった。
「確かに鬼道君の言うとおり、ジェミニストームの攻撃には一定のパターンがある。……でも、貴方たちは今、自分たちがどういう状況なのか分かっているの?」
「どういう状況?」
選手たちは互いの顔を見合わせ、お互いの様子を確認する。特に変わったところはないようだ。瞳子は言葉を続ける。
「今の貴方たちじゃ、相手のスピードには着いていけない。攻撃パターンが分かったくらいで倒せる相手じゃないのよ」
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
円堂が率直に疑問を述べる。瞳子はふっと不適に微笑んだ。
「こちらのディフェンスをすべてフォワードの初期位置まで上げるわ。全員攻撃するのよ」
は?と花織は思わず声を漏らしてしまった。そのくらい、監督の言い始めたことは突拍子も無いことだったのだ。サッカーを始めたばかりの花織でも分かる、そんな作戦は無謀すぎるだろう。
「そんなに上げるんですか?」
「でもそれじゃ、ディフェンスがいないも同然。それこそ奴らに抜かれでもしたら、終わりじゃないですか!」
土門と風丸が抗議をする。しかし監督はそれを聞き入れる様子もなく、いつもの口調でさらりと言った。
「だったら抜かれないようにすることね」
それだけ言って監督はベンチに腰掛け、足を組み直す。なんなのあの監督!!と新参者の塔子が監督の横暴さに叫んだ。花織も彼女と全く同意見だった。しかも例によってこの監督はこの戦略をとった理由を説明しないのだ。絶対に試合にはならない、守りがなくてサッカーは成立しない。花織は憤りを感じながら監督をにらみつけた。
そして後半は花織の想像通りとなった。一人抜かれるたびに得点へと直結する。円堂だけが集中攻撃を受け、何も出来ないままにエイリア学園ジェミニストームとの試合は32対0という前回よりも圧倒的な結果にて幕を下ろしたのだった。