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嫉恋

第20章 エピローグ




複雑な思いに耽っていると名を呼ばれた。振り返ると不動が礼服のポケットに手を突っ込んで俺の背後に立っていた。わざわざ呼びに来たのか、披露宴まではまだ時間があるだろうに。中学時代は誰とも馴れ合おうとしなかったくせに、今ではすっかり世話焼きが身についている奴だ。ついでに髪も生えてきた、禿げていたわけではなかったらしい。

「ガーデンでブーケトスだってよ。……行かねえの?」

気だるげに肩を竦めながら不動が言う。思わず眉を顰めた、行ったところで男の俺にブーケトスは関係ないだろう。だが不動が俺を呼びに来たということは、そろそろ俺の姿が無いことに誰かしらが気付き始めたのだろうと察した。

恐らく俺が抜け出した理由は各々推測できるはずだ。何しろ、俺が中学時代にお前を想い続けていたことは今日呼ばれている新郎新婦の友人たちはほとんど知っている。……惨めな失恋に泣いているのだと思われ始めたのだろうか。

「ああすぐに行く。わざわざすまないな」
「別に。外に出るついでに声掛けただけだ」

この男も、俺の中にある気持ちを知っているはずだが。ちらりと不動の表情を窺う。だが不動は気だるげに首を鳴らしながら俺に背を向けた。どうやら感傷に浸っている俺をからかう気はないらしい。

……中学の頃、FFIの代表として同じチームに所属していた時はさり気ない言葉で散々俺の傷口を抉っていたくせに。此奴も随分大人になったものだ。

「……花嫁サンがお前の事を探してたんでな」

俺に背を向けながら不動が呟いた。なるほど、俺の姿が見えないことを気に掛けていたのは花織だったのか。俺はふう、とため息をつきながら会場へと足を向けた。今日の主役に心配を掛けるわけにはいかない。俺は仮にも新婦の友人代表として呼ばれているのだ。
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