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嫉恋

第20章 エピローグ




「遅れてしまってすみません」

少しばかり息を切らせながらお前は申し訳なさそうに謝った。俺はそんなことはどうでもよかった。ただお前と会えるこの時間の訪れがあるならばそれでよかった。十年という月日が流れてもお前は俺を慕っていてくれている。アイツとは違う繋がり。

お前と俺には昔からアイツとは違う、特別な信頼関係があった。

その日は少しばかり世間話したところでお前が話を切り出した。鞄の中から封筒を取り出し、俺の前へと差し出した。その封筒は白に金色の縁取りがされていて、上品で何か特別な物であることは一目でわかった。俺はその瞬間にお前の表情と封筒を差し出した左手の指に嵌められている見慣れない指輪を見てすべてを悟った。

「あの、これ日取りが決まったので招待状を」

俺は無意識に眉を顰めていたと思う。……ついにこの時が来たか、という絶望的な思いが胸にこみ上げた。彼女が以前雷々軒での同窓会で話していた、奴のプロポーズを受けた、という告白とは違った衝撃が俺の頭をガンガンと揺らしている。現実的ではなかった受け入れがたい未来がすぐ近くまで迫ってきたことを察した。

「鬼道さんには直接、私の手で渡したくて」

幸せそうに、でもどこか含みを持たせてお前は笑っていた。お前の微笑みは昔から変わらない。より大人び、美しさを増したが本質は一切変化していない。優しくて、でも時に優しすぎて、胸を締め付けるような笑顔。お前は昔から本当に変わらない。美しい黒髪も白雪のような肌に桜色を差した頬も、そして凛としたアイツだけに想いを捧げる、意志の強い瞳も。俺が愛しているお前はそのままだ。

「……本当にアイツと結婚するのか」

俺は余裕があるかの様に装ってフッと笑って見せた。さり気無くコーヒーを口に含めば、ブラックコーヒーの苦い味が口の中に広がった。普段はちょうどよい苦さのはずなのに、今日は今まで飲んできたどのコーヒーよりも苦く感じた。

「俺ならば、アイツよりもお前を幸せにできるというのに」
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