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嫉恋

第20章 エピローグ




教会の鐘の音が、青く澄み渡った空の中に響いている。

穏やかな春の陽気が身を包み、温かで優しい気持ちが静かに佇む。どこかから聞こえる小鳥の歌うような囀りと陽光を受けた深緑の葉の美しい煌めきは、まるで今日この日を祝福している様に感じられた。

そんなすべてに祝福されているようなこの良き日を一人寂しく思ってしまうのは、この鐘のせいだろうか。俺は新調した眼鏡を押し上げて空を見上げた。青い空はいつだってあの青春の日々と変わらない色で彩られている。それを心の中で恨めしく思った。

あの輝かしい青春の日々から約十年経つ今日は、俺の親友の晴れの日だ。いや……、親友と呼ぶのではこの気持ちの理由はつかないか。思わずフッと己の女々しさに笑ってしまう。今日は、正確に言えば俺の初恋の人にとっての祝福の日だ。

――――花織。……月島、花織。

少なくとも中学を卒業してからは仲間達にひた隠しにしてきた、心の底から愛している女性の名前を俺は胸の中で何度も何度も繰り返す。初恋の人、そして今までずっと想い続けていたお前をいつか手に入れられると思っていた。心を取り戻せるのでは、と期待していた。だが現実はそこまで甘くはなく、来ないでほしいと願ってばかりいたこの日は容赦なく俺の所へ訪れた。

今日のこの日を知らされたのはおよそ三か月前だった。いつものようにお前からの呼び出しで久しぶりにふたりで会うことになった。きっと中学時代であればお前のこの行動にアイツは嫉妬の炎を燃え上がらせていたのだろうが、いつしかそんなことも無くなった。これはきっと今日という日を予感させる一つの因子だったのかもしれない。

その日は俺の行きつけの店で待ち合わせていた。一足先に到着していた俺はコーヒーを頼み、窓の外を見ていた。あの日も今日のように澄み切った青空が広がっていた。お前は頼んでいたコーヒーが来るよりも早く、胸元にはいつもと同じペンダントを下げて俺の正面の席に掛けた。
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