第18章 風を愛する者へ
「だから、私だけが一郎太くんに守られてばかりじゃ嫌だよ。……私も一郎太くんを守りたかった。今回の件も本当は相談してほしかった」
「すまない。……ただ、情けないと思ったんだ。男のくせに他の奴らに劣ることをずっと悩んでいるのは」
風丸が申し訳なさそうに花織に言う。花織に話さなかったのは男としてのプライドがあったからだった。他の奴らに嫉妬しているようなところを、たとえ宣言してたとしても花織の前に曝け出すのは気が引けた。
「私はそんなこと気にしない。……私だって初めは一郎太くんの足の速さが羨ましくて堪らなかった。きっと誰にだってそんな気持ちはあるよ。……もちろん、ヤキモチだって」
ふふ、と花織が悪戯っぽく笑う。風丸だけではない、嫉妬深いのは花織も一緒だ。そしてお互いにお互いの嫉妬深さを煩わしく思ったことなどないのだから、もっと言ってくれても構わないという彼女の気持ちの表れだった。
花織は諭すように風丸に言いながら、そっと手を下した。真剣な眼差しで風丸を見据えて懸命に話した。
「だからね、もう一人で悩んだりしないで。私だって一緒に悩めるし、考えることだってできる。一郎太くんの気持ちに共感して少しでも悩みを減らすことができるかもしれない」
「……花織」
風丸は花織の言葉が自分の中にあった不安や蟠りを静かに溶かしていくのを感じていた。今まで自分を覆い尽くしていた悩みが彼女の真意を聞いてしまえば、これほどちっぽけなものになるのかと思うほどに胸がすっきりとする。同時に益々花織を愛おしいと思った、自分を受容し強くある彼女を。
「一緒に走っていこう?お互いのこと、もっと良く知りながら」
「……ああ」
やっと風丸が花織の好きな笑みを浮かべた。花織の手を握り、じっと花織を見据える。