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嫉恋

第18章 風を愛する者へ




微笑みながら花織が風丸に言う。きっと彼がずっと悩むきっかけになってしまった要因。花織を大切に思うがゆえに空回りしてしまった彼の気持ち。痛いほどその気持ちが分かるから、今この場ではっきりとさせないといけない。

「力が無かったから一郎太くんは私を守れないって言ってたね。……でも一郎太くんはいつでも私を守ってくれてたよ。それは一郎太くんがいう強さではなかったけど」

出会って間もなく、花織は風丸に惹かれた。もちろん彼の足が速かったことが花織の興味を引いたことは否定しない。だがそれはきっかけに過ぎず、理由ではない。花織が風丸を好くようになったその理由こそが、ずっと花織のことを守り続けてきた。胸元に飾られた彼の贈り物がきらりと陽光を受けて煌めく。

「……私は、ずっと一郎太くんの優しさに守られてる」

花織が柔らかく笑みながら風丸の頬を撫でた。

「花織……」

そう、出会ってからずっと、彼はその優しさで花織の心を温めてきた。初めて出会った時から彼は花織に優しくしてくれた。鬼道を愛していた花織を自らの心を犠牲にして、励まし傍にいてくれた。彼の思いやりが確実に花織の心を動かして、今という状況を作り出している。

「一郎太くんは私を変えてくれたんだよ」
「え……?」

風丸が不思議そうな声を上げた。花織は微笑む。帝国に居たころの花織は鬼道に見てもらえることがすべてだった。走るという行為は彼の目に留まるための手段でしかなかった。でも、今は違う。風丸が花織の認識を変えてくれた。

「……ずっと私の傍にいて、私に誰かと一緒に走ることの楽しさを教えてくれた。一郎太くんが傍にいてくれるだけで、私は幸せだよ」

風丸は花織を守れていないと悔やむが、決してそんなことは無い。彼の存在が花織に色々なものを与えてくれた。走る場所、仲間、サッカー、そして限りない花織に対する愛をくれた。それがどれだけ花織を救ってきたか分からない。洗脳状態だった彼にも告げたが、花織はそういう風丸の人柄に惹かれてきたのだ。そして同時に感謝もしていた。
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