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嫉恋

第18章 風を愛する者へ




風丸よりも小さくて柔らかな花織の手。守ると誓っていながら、二度もこの手を離してしまった。でも、もう決して離したりはしない。己のすべてを掛けて、花織の手を握り続ける。

「ありがとう。……あのさ、花織」
「……うん」

花織は風丸の言葉を待つ。風丸は一度大きく息をついて、目を伏せた。ゆっくりと目を開ければ自分の大切な人がいる。それが堪らなく幸せだと思えた。意志が強く優しい、自分にとってかけがえのない恋人。出会った時からきっと好きだった。

彼はまたこの約束の場所で告げる。ここで言おうと約束していた花織を想い、愛する気持ちを。

「改めて言うよ。俺はお前のことが好きだ。……好きで堪らないんだ。初めてお前と一緒に走ったあの日から、ずっと」
「……うん。……私も、一郎太くんのことが好きだよ」

風丸が愛おしげに花織を見つめながら花織の手を左手で握ったまま、右手を花織の頬に這わせた。花織は何も言わずにそっと目を伏せる。彼とのこの行為は初めてではないはずなのに、どうしてか妙に緊張した。静かに風丸の唇が花織の唇に重ねられる。

サラサラと優しい風が花織と風丸の髪を揺らした。しばらくするとどちらともなく、二人はお互いを見つめる。と同時に互いにくす、と笑みを零してしまった。今のシチュエーションが初めて二人が付き合い始めた時に酷似していたことを思いだしたのだ。日が暮れた教室でこんなふうに二人の想いを通じあわせた。ふたりの関係の始まりの時だ。

ふたりはどちらともなく手を取り合う。風丸がふっと花織に微笑みかけた。

「そろそろ戻るか。あんまり戻らないと心配されるかもしれないからな」
「うん」

手を握ったまま、ふたりは仲間たちの元へと駆けだす。決して本気で走っているわけではないのにふたりの速さは他を寄せ付けないようなものがあった。

その姿を何かに例えるならばまさに風、それ以外の言葉は当て嵌まらなかった。


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