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嫉恋

第18章 風を愛する者へ




自分に背を向けた黒髪の少女、見間違うことの無い自分が愛してやまない人。美しい黒髪が風に靡く。近くの木々の葉がざわめいた。

「花織……」

か細い声で風丸が彼女を呼ぶ。その声には何となく躊躇いがあった。エイリア石の呪縛から逃れた今、風丸は自分が何をしてしまったのかを自覚してしまっていた。彼女を探していたくせに今の自分が花織と話す資格があるのか、そんな戸惑いが声色に現れている。

本当に嫌われてしまっていてもおかしくない。自分が彼女にしてしまった仕打ちを思い出してみると許されない気がした。風丸は不安げな面持ちで彼女の反応を待つ。花織は何も言わずに風丸を振り返った。

「一郎太くん」

風丸を見つめる優しい声色が彼の名を呼んだ。振り返った彼女のその表情には柔らかな微笑があった。いつも風丸に見せてくれる変わらない笑顔。彼女は風丸を見つめるとずっと彼に掛けたかった一言を彼に告げた。

「おかえりなさい」

花織は風丸を見つめていた。青い髪、茶色い目……、ずっと会いたかったいつも通りの風丸の姿を見て、彼女は思わず涙ぐみそうになってしまう。そんな花織の表情を見て風丸は罪悪感に駆られずにはいなかった。ずっと彼女からの電話もメールも無視し続け、卑屈になっていたあげく、あんなことをしてしまった。そう思い返すだけで自分が情けなくまた恥ずかしかった。

「……すまなかった」

風丸が頭を下げて謝罪の言葉を告げる、彼の髪が流れるようにさらりとゆれた。もちろん、こんな言葉で許してもらえるとは思っていないが謝るしかないと思った。風丸は花織に頭を下げ続ける。花織はそんな風丸の傍に歩み寄った。風丸が恐る恐る顔を上げれば、彼女はふんわりとした変わらない微笑を浮かべて風丸を見つめていた。

「私こそ、ごめんね」

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