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嫉恋

第18章 風を愛する者へ




クックと喉を震わせて風丸が嗤う。花織は顔を上げた。エイリア石の力だろうが何だろうが関係ない。仲間をこんなふうに嘲け笑える、今の風丸に花織は苛立ちを覚えた。細い眉が顰められる。

「……っ」

パン、と乾いた音が空に響いた。

突然の出来事に雷門イレブンもダークエンペラーズの選手たちもぽかんとしてふたりの様子を見つめていた。風丸は驚いた様子で花織のことを見つめている。彼女は唇を噛みしめ、手を振り切ったような姿勢をしていた。彼はジンジンと痛む左頬にそっと手をやった。……今の、花織が?

「……どうして?」
「花織……?」

風丸が困惑した表情で花織を見つめた。どうやら花織に頬を引っ叩かれたようだが、風丸にはその理由が分からなかった。花織は目にいっぱい涙を溜めて風丸を睨む。周囲は沈黙して二人のやりとりを見ていた。

「どうして貴方が、そんなことを言うの?」
「……」

風丸の髪が動揺と共に揺れた。花織の言葉に困惑したふうに風丸は何も言えず、彼女を見ていた。花織はこぶしを握る。

風丸がここまで力に固執し、エイリア石に手を染めてしまったことには花織にも一部責任があるかもしれない。彼を追い詰めたのはきっと花織の存在も関係あるのだろうから。

花織だって否定はしない。風丸がフィールドを誰よりも速く走る姿が見られれば、もちろん嬉しい。でもそれは誰かから与えられた力によるものでなければの話だ。

花織の知っている風丸はとても努力家で真面目な人だ。円堂たちとの特訓に毎日はげみ、花織との練習にも付き合ってくれて。いつだってどうすればもっと速く走れるのかを一緒に試行錯誤していた。花織はかつての自分と同じように、速く在るためにはどうすればいいか、真剣に考え練習に励む風丸が好きだ。そしてその結果として彼がピッチで誰よりも速く走ることができるのであれば一番いい。

それに決して速くなくたっていいのだ。風丸は初めて花織の隣で走ってくれた人だ。彼と一緒に走ることが花織にとっての楽しみだった。強いも弱いもどうでもいい、ただ風丸と一緒に走ることができるのならば。
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