第18章 風を愛する者へ
風丸は花織に微笑みかけ、じっと顔を寄せる。花織は自分を抱き寄せる風丸の手に抵抗できないでいながらも、何か嫌な予感を感じていた。ふと視線を落とした彼の首元に紫色の光が見える。この光にはどこか見覚えがあった。
「……エイリア石」
「なんだ知っているのか、花織」
風丸は愉快そうに笑い、胸元からペンダントのようにして吊り下げたエイリア石を取り出した。人を惑わせるような強い光を放つ美しい石。風丸はそれを掌に乗せるとうっとりとした表情で語り始めた。
「このエイリア石に触れた時、力が漲るのを感じた。求めていた力が」
「求めていた、力……?」
花織の瞳が困惑と絶望に色づく。感じていた違和感はこれだったのだ、この人は花織の好いている風丸一郎太ではない。エイリア石を見つめ狂気に満ちた微笑を浮かべるこの人は、花織が愛している人ではないのだ。
「俺は強くなりたかった。強くなりたくても自分の力では超えられない限界を感じていた。……力が無いせいでお前をエイリアとの戦いに参加させなければいけない、みすみす危険な目に合わせなければならない。お前を守れない自分に落胆していた。……そして誰よりも速くフィールドを駆ける俺が好きだと言ってくれたお前に答えることができない」
花織はぎゅうと拳を握る。今にも泣きだしそうな表情をして風丸を見つめた。彼を追い詰めてしまったのはやはり私だったのだ。真面目な彼は自分の一言一言や責任を重く受け止めてずっと苦しんでいた。花織は風丸の嬉しそうな表情を見ながらそう感じていた。
「でもエイリア石が信じられないほどの力を与えてくれたんだ。俺のスピードとパワーは桁違いにアップした。……もう誰にもスピードで負けやしない」