第18章 風を愛する者へ
「花織」
花織が風丸に疑問を伝えようとしたが、それより早く風丸が花織の後頭部を抑え、花織に噛みつくように口づけを施した。酸素を絡め取られて、花織は風丸にしがみ付く。花織のすべてを支配し、奪うようなキスに花織の瞳が生理的に潤む。大好きな風丸との口づけ、それなのにやっぱり何か違う。いつもの風丸らしくない。
風丸とのキスは基本的には軽く口づけるようなものが多い。時折風丸が花織を求めるようなものを施すこともあったが、それにはそれなりの理由があった。それにそのときだって花織を愛おしみ、花織が自分の手の中にあることを喜ぶような目で彼は花織を見ている。
この加虐的に色づく瞳を以前にも見たことがあるが、あの時の瞳とは違う。あの時の彼はこんなに冷たい目をしていなかった。
「……はっ、一郎太、くん」
花織が苦しげに息を吐く。風丸はそのまま花織の首筋に唇を這わせていく。されたことの無い行為に花織は思わず声を漏らした。花織はそのくすぐったさに風丸のローブを掴む。風丸はそのまま花織の制服のリボンを解こうとした。
「い、いやっ……」
花織は慌てて風丸を突き飛ばした。今日の彼はやっぱり変だ。花織は風丸から距離を取る。風丸は俯いてフフフ、と笑いを零した。そしてゆっくりと彼は花織に歩み寄る。風丸から得体の知らない恐怖を感じた。
「花織、どうしたんだ?」
猫なで声で風丸が花織を呼ぶ。手を差し出しながら花織に静かに歩み寄った。その表情には薄らと笑みを浮かべていて、やはりいつもの頼もしい笑顔を見せている彼とは違っている。