第1章 脅威の侵略者
何とも言えない空気が二人の間に漂う。気まずさから思わず花織は彼から目を逸らして俯いた。しかしそんな花織を見つめたまま、未だ盛り上がるバスの中で彼は小声でそっと花織に囁いた。
「……花織。その……、良かったら一緒に報告に行かないか」
「えっ……」
そう話を切り出した風丸の頬は微かに赤い。花織は驚いた様子で顔をあげ、風丸を見つめた。風丸は準々決勝の千羽山中学との試合後、花織に別れを告げてから碌に花織と話をしようとしなかったのだ。いくら決勝前に少し話をしたとはいえ、一時期は花織のことを完全無視していた時期もあったのだから、今花織と目が合ったことを絶対に良しとしないと思っていたのに。
「話をした後でいい。……きっとアイツらも花織のこと待ってるからさ」
「うん……。行きたい、……一郎太くんと一緒に」
風丸の提案に花織は微笑んだ。"すべてが終わったら陸上グラウンドのそばのベンチで"ふたりはそんな約束をしていた。花織はそこで風丸に改めて想いを伝える気であった。そして風丸もまた、花織に話があると言っていた。
「……一郎太くん」
「どうした?」
「優勝、おめでとう。一郎太くんのプレー、カッコよかったよ」
勢いに任せて言葉を口にした花織が、ふっと照れくさそうに笑う。風丸は一瞬きょとんとした様子だったが、我に返るとますます顔を赤く染めた。まるで恋人同士だった頃に戻ったかのようだ。こんなふうに言葉を交わしあえるなんて。